SUNO の style 欄に書いた語は、そのまま曲の条件になるわけではありません。生成のあとに SUNO 側が持っている style を見ると、書いた語のいくつかは消えていて、書いていない語が増えています。
プロンプトの作り方を説明する記事はたくさんありますが、そのほとんどは「入力した側」だけを見せています。生成のあとに何が残ったのかは、入力を控えておかないと確かめられないからです。
当社は、曲ごとに 入力した style と SUNO が返した style を 2 欄で残しています。この記事では、そのうちの 1 曲を開いて、書いた語がどれだけ通ったのかを数えます。扱うのは「Zero Gravity」(紫炎のモナムール名義・2026/10/10 配信)の 1 曲です。
入力した style と、返ってきた style
入力したのは、こちらです。当社の妄想バンドの機能で 4 パート(ボーカル・ギター・ベース・ドラム)ぶんの指定を作り、1 本の style にまとめたものです。
Kawaii metal hard rock fusion, cute high-pitched female vocals in Japanese, blazing alternate-picked guitar riffs with string-skipping solos, shredding lead bass runs with distorted tone, thunderous double bass drumming with reverb-drenched toms, up-tempo energetic 130–150 BPM, playful virtuosic power
生成のあと、採用した音源の条件として SUNO 側に入っていた style は、こちらです。
Kawaii metal hard rock fusion with big room reverb, cute high-pitched female vocals in Japanese, up-tempo 130–150 BPM, alternate-picked guitar riffs, string-skipping guitar solos, distorted bass runs and tapping, thunderous double bass drums, theatrical playful energy
一見すると似ています。並べ替えられただけのようにも読めます。ただ、カンマで句を切って照合すると、そうではありませんでした。
そのまま残ったのは、7 句のうち 1 句
| 入力した句 | 7 |
| 返ってきた句 | 8 |
| 文字までそのまま残った句 | 1 |
そのまま残った 1 句は、これでした。
cute high-pitched female vocals in Japanese
残りの 6 句は、語を落とされたり、分割されたり、順番を変えられたりしています。たとえば入力の 3 句目 blazing alternate-picked guitar riffs with string-skipping solos は、返りでは alternate-picked guitar riffs と string-skipping guitar solos の 2 句に分かれ、blazing が消えています。句の数が 7 から 8 に増えているのは、こうした分割が起きたためです。
落ちたのは形容、足されたのは場所と奏法
語の単位で差を取ると、入力に在って返りに無い語が 10、返りに在って入力に無い語が 8 ありました。
| 語 | |
|---|---|
| 落ちた語(10) | blazing・shredding・virtuosic・energetic・lead・tone・drumming・reverb-drenched・toms・power |
| 足された語(8) | big・room・reverb・tapping・theatrical・drums・energy・and |
この曲では、落ちた語に偏りがありました。blazing(燃えるような)・shredding(弾き倒す)・virtuosic(名人的な)・energetic(精力的な)は、どれも 演奏の質を上から評価する形容 です。残ったのは alternate-picked(オルタネイトピッキングの)・string-skipping(弦跳びの)・double bass(ツーバスの)のように、何をするかが書かれている語 でした。
落ちたもう一組は reverb-drenched toms(残響を浴びたタム)です。ここは細部の指定で、代わりに返りの先頭へ with big room reverb(大きな部屋の残響で)が足されています。タムという 1 つの楽器にかけた残響が、曲全体の空間の指定に置き換わった、という形です。
もう一つ足されたのが tapping です。タッピングは入力に一言も書いていません。distorted bass runs(歪んだベースの走句)という指定に対して、返り側では distorted bass runs and tapping になっていました。書いていない奏法が条件として足されたことになります。
ここから言えるのは、この曲の 1 回について、評価の形容は残りにくく、動作や奏法の名は残りやすかった ということです。同じことが他の曲でも起きるのかは、当社もまだ 1 曲しか並べていないので分かりません。次に曲を出すときに、同じ 2 欄で数えて確かめます。
返ってきた数字も、音の記録ではない
入力にも返りにも up-tempo 130–150 BPM が入っています。BPM の指定は、落ちなかった側です。
ところが、採用した音源を DAW(音楽制作ソフト)に読み込ませてテンポを検出させると、173.2574 bpm と出ました。130–150 の帯の外側です。
どちらが正しいという話ではありません。この記事で言えるのは、style 欄の数字と、音から検出される数字は別のものだった という事実だけです。返ってきた style を読むときも、書いてある数字をそのまま音の仕様として読まないほうが安全だ、ということになります。
in Japanese は通らなかった
そのまま残った 1 句には、in Japanese が入っています。日本語で歌ってほしい、という指定です。
ここで前提を一つ書いておきます。この曲は、歌詞を英語で入れています。もともと英語で書かれていた歌詞を 1 語も変えずに投入し、その上で style 欄に in Japanese を添えました。歌詞は英語、指定は日本語、という組み合わせです。
出てきた曲は、英語で歌っていました。歌詞のとおりです。当社の制作者が聴いた印象では、日本人が英語を歌っている、という質感は出ていました。つまりこの曲では、in Japanese は 歌う言語には効かず、効いたとしても歌い方の質感のほうだった、ということになります。句としては丸ごと残ったのに、書いた側が期待した「日本語で歌う」には通らなかった。
つまり、style 欄に残っていることと、その指定が音に効いていることは別 です。残った句を見て「通った」と読むと、こういう取り違えが起きます。日本語で歌わせたい場合にどうするかは、この記事では扱いません。別の題として改めて書きます。
自分の曲で同じことを見る手順
特別な道具は要りません。3 つだけです。
- 入力した style を、生成する前に別の場所へ控える。 入力欄は次の生成で上書きされます。控えておかないと、あとから差を取れません。
- 採用したテイクの style を、生成のあとに控える。 ここが返ってきた側です。曲ごとに違います。
- カンマで句に切って、並べて照合する。 目で見比べると「だいたい同じ」に見えます。句に切って文字で突き合わせると、残った句と消えた句がはっきり分かれます。
当社はこれを曲の台帳に 2 欄で書く形にしました。1 曲ぶんでも、書いた語のうち何が通らなかったのかは分かります。曲がたまれば、自分の書き方のどの部分が落ちやすいのかが見えてくるはずです。テンポのように数字で言える要素は、style 欄の値とは別に 音を測った値 も残しておくと、この曲の 130–150 と 173.2574 のような食い違いに気づけます。
この曲は Zero Gravity(紫炎のモナムール) で聴けます。この記事で並べた style から出てきた音が、実際にどう鳴っているかを確かめられます。
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